空飛ぶランタンとUFO
近頃のイギリスでは、夜空を集団で音もなく浮遊する不思議な光が報道されることが増えました。ロンドンとその周辺の州など、やはり人口の多い所で目撃されることが多いようです。オレンジや黄色の光がペアになったり一列や三角を作ったり、時には一度に何十も飛んでいて人々を驚かせます。実はこれらの正体はランタン、つまりちょうちんとされます。大体が高さ1m前後の紙袋に竹の骨組、内側にはローソクか燃料の部分があります。点火すると熱気球と同じで、中の空気が暖まって自然に浮きます。風に乗って飛び、内側の火で照らされたランタンはUFOのようで、遠くからは丸い光に見えます。元は中国で諸葛亮が発明したとされ、台湾やタイの一部ではお祭りで天へ向けて飛ばされています。これが近年は安くネットで通販されています。イギリスでは実際に結婚式でたくさん上げられてUFOと間違えられることがありますが、販売業者にとっては宣伝にもなります。おまけにイタズラ目的で自作の物を飛ばす人もいるのです。真面目なUFO研究者にとっては迷惑なことです。見慣れないとはいえ、もっぱらイギリスで今もUFOかと報道され続けるのはちょっと不思議な感じがします。もちろんこの種のUFO全てを否定できるわけではなく、目撃例によっては風に逆らったり知的な移動をしたり、速度や高度、時間やサイズがランタンとは思えない場合もあります。8月に南部の各地で目撃された時は、それ程まで広範囲に飛散するのは考えられませんでした。ちなみに、ハロウィンで見られるカボチャのお化けランタンは、元々はイギリスの伝説で、死後もこの世をさまよう男ジャック・オ・ランタンが持つランタンに由来しています。幽霊とUFOが騒がれるイギリスには幻想的な空飛ぶランタンがよく合うのかもしれません。