ある晴れた日、ちょっとふしぎなおばあさんに出会いました。
顔はよく日に焼けていて、頭にずきんをかぶり、見なれない服を着て手にはふろしきづつみを持っています。いつも通る道で いつのころか このおばあさんと出会うようになりました。はじめは気にしてなかったのですが、そのうちふしぎなことがあって何だかおかしいなあと思うようになりました。
ふしぎなこと・その 1
ある時、自転車に乗ったおじさんが、ふしぎなおばあさんとぶつかりそうになりました。しかし、そのおじさんはすうっと、おばあさんの体を通りぬけて何もなかったように、そのまま自転車で走っていきました。
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ふしぎなこと・その 2
またある時、ふしぎなおばあさんは 土手をすうっと通りぬけて、川の上をすたすたと歩きだしました。まるで地面の上のように。
そして、川の真ん中まで行くと 大事そうに何かを持ち上げては風呂敷に包んでいました。
その川の辺りは、ちょっと前まで「こびとさんの島」があったところです。みなさんは「こびとさんの島」って知っていますか。
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とうとう ある日、おばあさんにたずねてみました。「どうして、川のまん中を歩いていたの?」
すると、おばあさんはいいました。「こびとさんに頼まれて、忘れ物を取りに行っているのだよ」 |
こびとさんたちは、島がなくなる時 大急ぎで脱出したので、たくさんの思い出を そこに忘れてきてしまったのです。
島のあったところには、こびとさんたちの思い出がいっぱい浮かんでいて、それをおばあさんがふろしきにつつんで持って行ってあげるのだそうです。
おばあさんは、こびとさんから頼まれるたび、川に出かけて行きます。
そして、1つずつ思い出をひろってはふろしきにつつんで、それをこびとさんに届けていたのです。 |
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ところで、
島がなくなって、こびとさんたちはどこに行ったのでしょうか。私たちには見えなくても、おばあさんには今もこびとさんがくらしていた島がはっきりと見えるそうです。そしてもちろん、こびとさんのいるところも知っています。 |
私たちは、ふしぎなおばあさんの姿は見えますが、島も浮かんでいるこびとさんの思い出も見えなくて、こびとさんたちが今どこにいるのか知りません。
それでも、にもつでいっぱいの風呂敷とおばあさんを見かけるたびにきっとどこかで、こびとさんが元気にくらしているんだなあとうれしく思います。
もしかして、こびとさんの思い出を全部はこんでしまったらふしぎなおばあさんを見かけることもなくなってしまうのでしょうか。 |
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これは5月にnBoxのブック展へ出品した絵本からです。6月号に掲載した「こびとさんの島」の続編にあたります。2冊ともカラーで販売していますので、興味がある方は教室にお問い合わせ下さい。都築 |
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