版画と工作 井関さおり

 3月の課題でご紹介するのは、まず「粘土版画」です。版画というと、画材で紙に直接絵を描くのではなく、一度「版」を作ってから行うので、めんどくさそう・・・と思われることもあります。
 しかし、粘土版画はとってもかんたん。柔らかい油粘土を平たくして、へらなどで線を彫るだけです。好きな形も作れるし、力の弱い小さな子でも楽に彫ることができます。刷りの作業の時、版をつぶさないように力を入れすぎないのがコツです。
 手加減やコツが分かってくるとみんな熱中して、1時間で課題を終わらすのが惜しい時もありました。
 写真の版見本はSちゃんのかわいいふなっしーとランドセル。刷ると左右反転するのが分かります。
 Sちゃんの描くふなっしーはいつもなぜか本物よりかわいらしくて(本物の怪しい魅力も好きですが)、見ると和みます。描く本人らしさがにじみ出るのでしょうね。
 Rちゃんの絵は、白黒では分かりませんが、同じ版を色違いで刷ったり、版画ならではの楽しみ方をしています。
 2つめにご紹介するのは、上級生の「ボーリング」。
 以前にIくんに教えてもらった、「ビーダマン」の玉が出る構造を参考に作らせてもらいました。見本に作ったものはとても簡単な形でしたが、さすがのIくんは写真のようなスペシャル発射機を自分でアレンジして作っていました。
 自分の頭で考えて、物事をさらに発展させていくことができる、ということは、工作に限らずどんな場面でも本当に大事なことです。
 そういう成長を見せてもらえて、とても頼もしく思いました。Iくんのこれからの成長も楽しみです。がんばってね。

国吉晶子

 子どもクラスの皆さんにはちょっと関係ないかもしれませんが…
 去る3月20日、受験クラス(教室の奥の部屋)でにぎやかに「お別れ会」が開催されました。
 受験クラスは高校生を中心に、主に美術系の大学進学を目指す人のためのクラスです。絵を描くことが大好きでやってきたのに、来る日も来る日もデッサンなどの課題を強いられ、くじけそうになる日も…。そんな苦行を終えて、無事に進学先を決めた彼らを教室で労う近年恒例の行事です。お菓子に飲み物、都築先生の手料理が振る舞われます。
 今年も生徒一人一人には、当日に特定の格好(コスプレ)をするというお題が与えられました。初音ミク、ダースベイダー、ラムちゃん、桃太郎、貞子、ふなっしーetc…と、本人の性格を考慮して私たちスタッフが決定しました。皆「えーー」と言うものの、お題を変えてほしいという生徒は一人もいませんでした。もちろん手先が器用なわけですから、衣装は手作りです! 市販のものをレンタルしてきた人もいます。それはそれでOK!
 将来、絵を描いたり、ものをつくる仕事を目指している小学生のみなさん、ぜひ造形教室の受験クラスへ進級してくださいね!

都築房子

 香美市立美術館では、4月5日(土)より5月25日(日)まで、洋画家の宮地俊一郎さんの個展を開催します。
 宮地さんは1932年に現在の四万十市、西土佐(昨年日本で一番暑い所になりました)で生まれました。高知大学で学校の先生になるための勉強をしていた頃に美術と出会い、それから先生になってからも自分で絵を描くことを学んでいきました。1963年には高知県展で無鑑査となっています。この頃は、当時の世の中に抽象的な表現が流行していたので、宮地さんも世相に対する気持ちを思い切りキャンバスにぶつけるような表現をしています。しかし、やがて1970年代には独自の風景画を描くようになり、パリや故郷の西土佐など日本の各地を訪ねてまわり、心で見た景色を自由に変化させたオシャレで味のある絵を次々と生み出しています。
 今回の展示は、そうした宮地さんの若い頃から現在に至る画風の変化が感じ取れるようになっています。2001年まで高知大学で講師として指導されて、現在82才になる宮地さんですが、今でもみずみずしい感覚で美しい風景画を描き続けています。見たままではなく、心で描いたこれらの絵画の数々をぜひご覧ください。早めに来られますと、美術館へ通じる八王子宮の桜のトンネルもご覧いただけます。