6. スーパーなど 都築房子

 私の周りで初めてスーパーマーケットができたのは小学校高学年の頃でしたが、今は日本中にどこでもあるコンビニやスーパーが全くない世界など想像もできないことでしょう。
 初めてのスーパーは菜園場商店街の一角にできましたが、大人も子どもも夢中になりました。それはこれまで個々のお店で品物と引き換えにお金を払うシステムから、スーパーの籠の中へ商品を勝手に入れて出口でまとめて支払いをするというシステムに大きなときめきがあったのです。皆が興奮してどんどん品物を籠に入れていき籠から溢れるほど山盛りに買物をしていました。そこに行けば何から何まで生活に必要な物が全て揃っていて、欲しい物がいっぱいある夢のお店でした。それまで細々と暮らしていた生活のスタイルが一変して皆の消費欲が一気にエスカレートした様子が子どもにも感じられました。特に、私たち子どもにとっては袋に詰められたお菓子の登場はとても画期的でした。それまで1つ1つバラ売りで少しずつ買っていたお菓子が袋一杯で買えるのです。大人も子どもも夕食後にお菓子を食べながらテレビを見るようなライフスタイルが生まれてきて戦後の慎ましい暮らしが崩れ始めました。
 さらに便利な生活を目指して電気製品も普及し始め、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などが順次家庭に入ってきました。特に洗濯機が家に来た時は、母や祖母がとても喜んでいたことが印象的でした。(それまでの洗濯は力仕事でとても大変だったからです)このように私たちの世代は物が無い時代から、物が溢れる時代へと移っていく様を見ながら成長してきました。人々は質素でささやかな幸せを求める暮らしから、たくさんお金を稼いで欲しい物をどんどん買う幸せを味わいたいと思うようになっていきました。

(17) インクレディブル!インディア
 2. ジャイプル
チュンズ

 6月15日(月) 3:00に目が覚め、身支度を整えた。
Shatabdi Express(往復1,000ルピー)のエアコン席を予約してあるから、ニューデリー駅を6:05に出発し、10:45にジャイプルへ着く予定だ。
 5:00にガイドさんたが迎えに来てくれて、車のトランクへ荷物を積み込み、私たちはまだ薄暗い中を駅まで走り出した。駅前はオートリキシャや車で混雑していた。こんな時間からこの大勢の人たちはどこへ?!
 駅のホームにもたくさんの人人人。外国人はほとんど見かけない。グリーン車のような席が指定された車両へ乗り込み、車窓から見える風景や車内食を楽しみつつ、快適な列車の旅を満喫した。ジャイプル駅に到着し、激しい客引きをかいくぐって、ようやく捕まえたリキシャに乗ってホテルまで40ルピーで運んでもらった。相場より少し高いが、目的地に着けば問題ない。
 ネットで予約していた「カルニニワス」に着くと、HPの写真は新築のときに撮ったんだな、というくらい雰囲気が違った。バスタブとエアコンのある最上階の広い部屋を選んだが、床の埃とかすごいし、お湯もほとんど水!ここで4泊するんだけどダイジョウブか???
 夕方から周辺を散策していると、急な砂風と夕立に見舞われ、着ていた白いワンピースが茶色のまだら模様になった。
 6月16日(火) いろんなことをまだ上手く表現できない自分がイヤで、朝5:00にシャワーを浴び、洗濯と身支度。7:00には散歩に出かけた。一人で町を歩くことで、モヤモヤしているものを吹き飛ばしたかった。ガイドブックの地図で周辺を確認してホテルを出た。近くのゴミ捨て場には超でかい野良イノシシ親子を見たが、ここではこのくらいで驚いてはいけない。2キロほど歩いて映画館まで往復。部屋へ戻り、レセプションへ行って、シーツを取り替えて床とバスルームをきれいにしてくれるよう頼んだ。8:00に部屋へあたたかいチャイを持ってきてもらい、昨日道すがら買ったバナナで朝食を済ませた。
 午前10:00出発で買い付けに出発。今回お世話になったガイドさんが勧めてくれた彼のお友達のファブリックの店は、複数の従業員さんたちがいるきれいなところだった。18のときから商売を20年やっているという店主の柔軟な人間性と巧みな商談ペースに巻き込まれるとつい言われるままに買ってしまいそうになり、途中休憩を挟んで自分の予算を考ええつつ挑んだ。塩味のラッシーやお昼(奥様お手製のナン、お米、数種類のカレー、ビールなど)までご馳走になり、いろいろ勉強させてもらうことができた。午後からホテルへ戻って少し休み、夕方からジャイプル駅周辺を1時間ほど散歩した。
 インドに来てから様々なタイプの人々を目にするせいか、物事の責任のとり方やリーダーである(まとめ役にまわる)ということ、「人」を雇うことのできる「人」についてを、自分なりに深く考えた。(続く)