井関さおり

『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(著者:米原万里 / 出版社:角川書店)

最近読んだ中で面白かったのはこの本、2006年に残念ながら亡くなられましたが、ロシア語同時通訳・作家として活躍した米原万里の、ソビエト学校時代の級友たちをめぐるノンフィクションです。
9歳から14歳までをチェコのソビエト学校で過ごした作者は、同じく共産主義で政治的影響力のある親を持つ、様々な国出身の生徒たちと出会います。
私は社会主義思想だとか、冷戦構造の崩壊であるとか、そういうことをあまり知らず社会人になり、リアリティも感じないままでした。しかしこの本にはそういう諸々のど真ん中で10代を過ごした人々が生き生きと描き出されていて、記録や評論では分からない時代のダイナミックさが伝わってきます。なにより、出てくる人々がみんな、私たちにも普通に覚えのある、見栄とか欲とか友情とか、理屈で収まりきらないエネルギーに満ちていて、愚かに見える面すらも友人や自分自身を見るように目が離せない気持ちになってきます。
米原万里はエッセイなど他の著書も大変面白い作家ですが、この本は、あけすけで大いに笑える日常会話から、社会情勢に翻弄される不安の中でもたくましく生きる姿まで、スピーディーかつ濃厚に楽しめます。
ちなみに、もう少し軽く読書を楽しみたい方には、講演録集『米原万里の「愛の法則」』もおすすめです。オビのアオリが“女が本流、男はサンプル!?なぜ「この人」でなくてはダメなのか?”。男女論も、翻訳業や国際化への諸々のお話も、可笑しくかつ頷いてしまう内容満載です。

ラーラ

 暑い暑〜い夏ですね。
 
灼熱の日射しに、63年前の悲劇を想います。広島、長崎への原爆投下で、21万人を超す被爆者が1945年末までに亡くなっています。
 記録映画『ヒロシマナガサキ』を、8月6日(水)県民文化ホールグリーンで、10、12、14、16、18、20時の6回上映します。高校生以下は無料です。高知市内の中学校2校が、登校日に総見予定です。若い人たちにこそ観ていただきたい映画です。
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 スティーヴン・オカザキ監督は、1952年ロサンゼルス生まれの日系3世。英訳の「はだしのゲン」を読み、広島、長崎の原爆投下に関心を深め、1981年広島を初めて訪れた。被爆者を取材した第1作「生存者たち」(82)を発表。日系人強制収容所を描いた作品「待ちわびる日々」(91)でアカデミー賞ドキュメンタリー映画賞を受賞した。アメリカでは原爆投下が「戦争を早期に終わらせ、日米両国民の命を救った」との認識が強い。オカザキ監督は広島、長崎の事実を伝え、核の脅威を世界に知らせることが自分の役目と考えるようになる。
 『ヒロシマナガサキ』(07)は、オカザキ監督が500人以上の被爆者に会って取材を重ね、25年の歳月をかけて完成させた渾身のドキュメンタリー映画である。

国吉晶子

8月24日〜9月7日の15日間、兵庫県丹波市の「丹波の森公苑」という施設で滞在制作を行うことになりました。
施設内のアトリエ(一軒家)にキャンバスや画材を持ち込み、そこで生活をしながら絵画の制作に励みます。
普段の生活からいったん離れ、絵漬けの日々を送るわけです。
また8月27、28日は「マーブリングで絵本を作ろう! 〜ふしぎな模様のたんばの森〜」という美術教室も行います。丹波市・篠山市の子どもたちとの交流が楽しみです。
山に囲まれた環境なので、一日中静かだと思います。ただイノシシも出ると聞いているので、見慣れない動物や虫に驚いて、絵が進まないかもしれません…。 とにかく、がんばって行ってきます!