−私たちのなかの子どもへ− (28) |
久保慧栞 |
「絵本と私」(著者:中川李枝子 / 出版社:福音館書店)
世界じゅうの絵本を、絵本(児童書)作家がエッセイ風に紹介した本です。著者である中川さん自身の大人気シリーズ『ぐりとぐら』も、もちろんこの101冊に入っています。(101冊という数字から白黒ブチのダルメシアンが飛び出してくる方も多いことでしょう!)
もともと北海道新聞に連載され、各地の新聞で転載されていたのをまとめ直して出版したということ。余談ですが、機会あって新聞掲載版と本書を読み比べると、新聞と個人の名前で出す出版物の違いというか、著者の手の跡がよく見えて興味深かったものです。
エッセイにはそれぞれにテーマがあり、ストーリー紹介はほとんどありません。パーソナルなことから大きなことまで、親子が一緒に生きていくうえで知ってほしいなあと思う内容が詰まっています。エッセイそのものは大人向けで、実際に絵本を読んでいなくても楽しめる内容です。東西の民話から創作絵本まで幅広く、評価の定まった古典的な作品が中心。絵本の手引き書にプレゼントしても喜ばれそう。
それぞれの絵本とエッセイは見開きで紹介されていて、すばらしいことに、テーマに沿ったページや場面を、原本の絵本から転載しているのです。絵本の福音館とはいえ、このようなことができたのは、中川さんの作品のファンがいかに多いかという証でもあるのではないでしょうか。 エッセイのテーマを少しだけご紹介すると、ミッフィー(うさこちゃん)の絵本は、「だれかさんとそっくり」。皆が同じ顔だから?と思いきや、もっと深い親子の絆に結ばれるテーマでした。めずらしかったのは、アニメ映画『となりのトトロ』まで入っていること。実は中川さんが「歩こう 歩こう」というテーマ曲の作詞をされていたのでした。
|