ラーラ

 きたる2月11日(祝)午後、「いのちの食育シンポジウム」を、高知城前電停から北へ徒歩約3分の人権啓発センターホールで開催します。
 仕掛人は、管理栄養士の野本江利香さん。栄養素とカロリー計算で組み立てる、現代栄養学に限界を感じ、諸国行脚のあげく巡り会った、吉田俊道さんほかを講師に迎えます。
 吉田さんは1959年長崎県生まれ、九大農学部大学院出身で、農業改善の仕事に携わったあと、生ごみでの土づくりを子どもたちに指導。土と微生物と野菜といのちのつながりを実感する食育運動が、長崎県下に広がっています。子どもたちからの感想は「食べカスが土に帰り、それがさらに元気ないのちになり、私たちの口に戻ってくる。自然のリサイクルは、すごい!」「僕たちがふだん気持ち悪いと思っている、虫や微生物が最高の働きをしている!」など。おなかの中のお花畑(腸内細菌叢)は、自然の土と同じ働きをしているのですね。
 ほかに、『食卓の向こう側』の連載で「食糧の60%を外国から輸入しながら、毎日4千万人分に相当する生ごみを出す日本」の現状を訴える、西日本新聞社編集委員の佐藤弘さん、いまの子どもたちに多い「歯並びの悪さ」「口呼吸」「鼻炎」の背景にある食事情の改善にとりくむ、歯科医の松見哲雄さん、を迎えます。
 このシンポジウムは、「いのちあるものを感謝していただく」「人・土・社会、いのちはみな、つながっている」という考え方を基本にしています。すでに「食と農」の大切さを考え実践している、「土といのち」「ゆうきリサイクル高知」「ちさんネット」「黒潮蘇生交流会」の各NPO法人が応援し、高知でのネットワークづくりが始まります。楽しみです。
美和 クランマー
今回の便りは久しぶりに美和クランマーさんです。教室の卒業生で、アメリカ人の夫と5人家族でニューヨークの隣のニュージャージー州に住んでいましたが、お引っ越しをされたそうです。

 私は昨年の秋、急に引っ越ししました。主人が新しい仕事を見つけたのです。前の職場で三週間の退職届後の仕事をしたあと、すぐ新しい職場に移りました。今度は、カナダの近くのニューハンプシャー州というところで、自然がとても美しい田舎です。三週間の間にバタバタと家を買い、荷物を運び、子供たちも転校させました。以前より、北方の州へ移りたかった主人は転職活動を続けていて、ついに採用されたので大喜びです。子供たちも、広いスペースで外で遊べてうれしいようです。カマキリやコオロギに大騒ぎしているのを見て、今までそんな昆虫も知らなかったのか…とかわいそうに思いました。
 私といえば、今までの都会の生活と違って、とても不便を感じます。ここは森とリンゴ畑しかない市で、住宅は森の中に点在し、けっこう住民も多い割に商店というものがありません。レストランもありません。高速道路の近くにある巨大スーパーや薬局などが唯一の店というものです。スーパーも車で7〜10分走らないといけないので週一回、まとめ買いします。車がないとどこへも行けないのですが、主人が仕事に車で行くので、私と一番下のジェイムスは毎日家にいます。上の二人はスクールバスで学校へ行って帰ってきます。ジェイムスが友達もいなくて保育園もなく、退屈なので図書館のストーリータイムや、隣の市のスポーツセンターのサッカークラスへ連れて行ったりします。主人が時々、昼休みに家に帰ってきて、職場へ戻る時、私が運転し、午後は私が車を使って夕方、主人の仕事場へ迎えに行きます。今は雪がずっと積もっています。昼は−5℃ぐらいで、夜や朝は−20℃〜−15℃のことも多いです。雪国に住んだことのない私も主人も、雪おろしや雪かきに四苦八苦しております。裏庭には、鹿や野ウサギ、スカンク、ハリネズミ、リス、フクロウ、アオサギ、カワウソなんかがいたりします。裏庭の一部は森で、一部は湿地帯につながっているので、雪の上にいろんな動物の足跡があります。ボブキャットやコヨーテもいるらしいのですが、夜行性なので見たことはありません。
 まだここでの生活は三ヵ月。秋にはそこら中ヘビがいて閉口しました。蚊やチックの病気も夏は心配です。どうなることやら…。それではまた。

−私たちのなかの子どもへ− (26) 久保慧栞

こそあどの森の物語シリーズ(著者・絵:岡田 淳 / 出版社:理論社)

  「こそあどの森」は、いい感じに暮らせる森です。というのは、住民が少ししかいなくて、しかも皆すてきに個性的な家があり、誰も外へ働きに行くわけではなく、それぞれに距離のとり方や近所付きあいが無理なく行われているからです。
 この森には、子育てをしている人はいません。夫婦、姉と弟、詩人、双子の女の子たち、引っ込み思案なスキッパー。主人公のスキッパーは、耳の大きな感受性の鋭い男の子。博物学者のバーバさんと一緒に住んでいるのですが、バーバさんはほとんど旅に出ていて、スキッパーはたいてい独り暮らしです。
 スキッパーの家はウニの乗った船に似ているので、ウニマルという名前です。食事はカンヅメです。本はたくさんあります。それでいい。そう思わされる幸せの形が、こそあどの森には満ちています。住人たちは降って湧いた冒険も楽しみますが、いつも心に留めているのは、自分以外の人へのやさしさです。特定の人だけでなく、皆と仲良くするという、人間としてとても難しいことを、彼らは実践しているのでした。
 あの人はどうして怒ってしまったんだろう。今日はどうして心が浮き浮きするんだろう。あの人は喜んでくれるだろうか。深い森の中で暮らす住人たちに教えられるのは、自分を本当の意味で大切にする、ということなのだと思います。