−私たちのなかの子どもへ− (17) 久保慧栞

『子ども時間の本たち』(著者:久保慧栞 / 絵:中西奈穂子 / 私家版)

 今月は、自著『子ども時間の本たち』を紹介させていただきます。昨年一年間、高知新聞紙上で連載させていただいた同名の児童書エッセイを、このほど、一冊の本にまとめました。このタイトルは、もともと、造形通信の連載のタイトルだったのですが、新聞連載を経て、本のタイトルとなりました。内容は連載時よりも加筆しています。50冊の本のセレクトは同じです。
 いわゆる児童書と呼ばれているこれらの本には、「大人のなかの子ども」に向けたメッセージが込められていて、私自身が本との対話のなかから励ましや癒しを得た体験談としても読んでいただけるかと思いますし、この本が、本との新しい出会いのきっかけになれば、何よりうれしいことです。
 50点の絵すべてに登場する「くつ」は、「自分の足で歩いていく」という願いを込めて描かれました。それは、いまだに自分の足で歩くことにふらついている私自身に向けたメッセージでもあります。表紙の絵は『魔女ジェニファとわたし』(カニグズバーグ作)のイメージ画で、ハロウィーンの仮装をした少女ジェニファの気配がいかにも魔女風。そこはかとない雰囲気がただよう、大好きな絵です。
 仕事ではよく印刷物を作るとはいえ、自分の本となると、また見方がちがうものだということがよくわかりました。すべて自分たちで決めないといけないということも含めて。どこかにこの本が受け入れられる場所があり、必要としている人がいるにちがいないと思いながら、一冊の本をつくるという作業に打ち込んだ数ヶ月でした。
 本をご希望の方がいらっしゃいましたら、直接ご連絡いただくか、あるいは、冨士書房さん、金高堂書店さんでも取り扱いしていただいていますので、よろしくお願いいたします。

久保さんはお仕事では慧栞(けいか)という新しいお名前に統一されることになりました。それに合わせて、この記事のペンネームも今回から改めさせていただきました。ご了承ください。都築
ラーラ

 『沈黙の春』を書き、この惑星で共生している生命系の未来について警告した、海洋生物学者の女性が、レイチェル・カーソンです。彼女の『センス・オブ・ワンダー』は、幼児期の自然体験をとおして、神秘さや不思議さに目をみはる感性を!と語りかけている本です。
 ーー「知る」ことは、「感じる」ことの半分も重要ではないと私はかたく信じています。こどもたちが出会う事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵をうみだす種子だとしたら、さまざまな情緒やゆたかな感受性は、この種子をはぐくむ肥沃な土壌です。幼いこども時代は、この土壌を耕すときです。美しいものを美しいと感じる感覚、新しいものや未知なものに触れたときの感激、思いやり、憐れみ、賛嘆や愛情などの感情がひとたびよびさまされると、つぎは、その対象についてもっとよく知りたいと思うようになります。ーー
 こうしてはぐくまれた感性が、きっと造形教室で表現されていくのでしょうね。
 この本を翻訳した上遠恵子さんのお話を、4月16日に聴きました。75歳とは思えない、両えくぼの愛らしい少女のような方でした。「本屋さんで『センス・オブ・ワンダーはありますか?』とたずねたら、『戦争って何だ、ですか?!』と聞かれました」「でも、『民主的国家でなければ環境はまもれない、平和でなければ環境はまもれない、戦争は最大の環境破壊』ですね。矛盾や不条理を『あやしいぞ!』と敏感に感じとることもセンス・オブ・ワンダーです。」「地球上の80%のひとたちの犠牲のうえに成り立つ『ゆたかさ』ってなんでしょう?」「破壊と荒廃へつきすすむ社会のありかたにブレーキをかけ、もっと質素に、もっと素朴に、もっとローカルに、生活しましょう!」と、きついことをおだやかな表情で話してくださいました。
 高知レイチェルの会では、定期的に親子の自然体験会を行っているそうです。そのようすが、スライドやビデオで紹介されました。こどもたちの表情が輝いていました。(連絡先:843-2379深瀬さん)
「こどもたちの未来を救う、Tシャツアート展」 都築房子

日本では今、21世紀をともに生きる子供たちが危機にさらされています。「児童虐待」や「ネグレクト」という言葉に示されるように、親や保護者による暴力や虐待を受けながら、誰にも助けてもらえず亡くなったり、心身に傷を負ったまま成長する子供の数が増え続けています。
会期:2005年8月21日〜30日
会場:東京都美術館 第1彫塑室他
     (台東区上野公園)
主催:現代アーチストセンター
このような子供たちを援助する目的でTシャツアート展が計画されています。この計画の詳しい内容に興味があり、ぜひTシャツをつくって参加してみたいと思われる方は、造形教室に現代アーチストセンターからの募集資料がありますので、お問い合わせください。なお、教室のスタッフは全員参加する予定です。