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「だれも欲しがらなかったテディベア」
(著者:アラン・アルバーグ/絵:ジャネット・アルバーグ/訳:井辻朱美/出版社:講談社)
主人公は、テディベア。でも気のいいクマくんじゃ、ありません。ぬいぐるみ工場でつくられたときに、顔を縫った「仕上げ屋さん」の手もとがちょっと狂ったおかげで、心も曲ってしまいました。(そういうものなのです。)そして顔のゆがみから「ペケ」の烙印を押され、世間の荒波に放り出されます。
ぬいぐるみだからといって、かわいがってもらえるとは限らない。けれども、いつも「フン」とか「ヘン」とか文句ばかりのクマくんにとって、どうして自分ばかりがこんなつらい目にあうのか、さっぱりわかりません。見下していた相手より立場が悪くなっても、汚れて誰にも相手にされなくても、曲った心のせいだなどと、どうしてクマくんにわかるでしょう。
だって、クマくんがゆがんだのは、クマくんのせいではないのですから。どん底の行き止まりでクマくんを襲う運命に泣かされながら、私たちは「誰が悪いの?」「誰も悪くないよ!」と絶望のかなたの希望を探します。かすかな希望の光が、さしこんでくることを信じて。
久保理子
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