ナーガの火の玉
ナーガとはインドの神話に登場する神々の一族です。その名前が蛇を意味する通り外見は蛇なのですが、中身は日本や中国の竜のような存在です。上半身が人間で下半身が蛇の姿や、いくつもの頭を持つ大蛇としても描かれます。地底や海底に住み、人間に変身することもできるとされます。東南アジアでは、ナーガは農業に必要な水の恵みをもたらす神としても人気があります。
インドの仏教や神話が伝わっているタイでは、国民の殆どが熱心な仏教徒です。毎年、7月からの雨期の約3カ月間は、お坊さんは寺にこもって修行する時期となっています。終わるのは10月最初の満月の日。それに合わせて、タイ北東のノンカイ県ではナーガのお祭りが開かれます。メコン川では川に住むナーガが火を吐くとされ、たくさんの火の玉が報告されます。昨年は国の内外からノンカイに40万人以上の見物客が訪れたそうです。一方、タイの民放テレビ局は、隣の国ラオスの兵士が雨期の終わりを祝って撃つ曳光弾(赤い光を曳いて飛ぶ特殊な銃弾)が火の玉だとする番組を放送しました。多くの抗議を受けたテレビ局は謝罪したのですが、大変論議を呼びました。タイの研究者は、火の玉の一部は曳光弾である可能性を認めていますが、本物は百年以上前から見られたとします。銃声のような音はたてずに、水面から垂直に上昇して消えるそうです。現地の土や水を調査したタイの科学技術省も、川底から表面に上がってきたガスが発火して起きる自然現象だとしています。10月のノンカイに集中して発生するのはちょっと不思議な気もします。