都築房子

 私はこの10月はとても忙しく、1ヶ月の間に東京、香川、大阪、神戸とあちこち走り回ってきました。
 まず、東京では4日間の研修を受けました。これは美術館の新任館長を対象とした研修会でした。その最終日に時間の都合をつけて、東京都現代美術館と深川江戸資料館に行ってきました。現代美術館は美術の最も新しい表現を見ることができて、とても刺激的でした。江戸資料館では、江戸情緒あふれる江戸時代の町並みの実物大模型を見ました。そこでは江戸時代の時間がゆっくりと流れているようで、家の中に入って座敷に座ると、その空間の一部のようになって心をゆったりほぐすことができました。時代の最先端と過去の時代の両極を味わってきました。
 次に東京から帰ってすぐに、香川県の高見島に行きました。そこは瀬戸内国際芸術祭の一環として、瀬戸内海に浮かぶ小さな島に様々な現代美術の作品が展示されていました。その中にどうしても見たい若手作家の作品があり、激しい雨の中、船で島に渡りました。途中から横なぐりの雨になる中、島内をあちこち歩き回りました。高見島は過去に栄えた所だったようで、とても立派なお屋敷があちこちに残されていて、それがどれもそのまま空き家となっていました。それらの家を利用して、作品展示がなされています。島のこれまでの歴史に関わる作品が多く、考えさせられるものがあり、興味深かったです。
 そして、次の週には神戸ビエンナーレと兵庫県立美術館での展示を見るために、再び出発しました。神戸駅と元町駅の間のガード下がビエンナーレの会場の1つとなっていて、都会の吹きだまりのような場所に作品が展示されていました。若手作家のペインティングアートで地域を活性化させようという狙いは分かりますが、とても寂れた所でびっくりしました。兵庫県立美術館は、以前あった山手の場所から1995年の震災の後、海手に下りて港の辺りにとても立派な美術館ができていました。そこに1989年に制作した私の小さな作品が展示されていました(美術館に収蔵されました)。24年前の作品との再開はとても懐かしく、嬉しい時間でした。
 このように様々な場所で色々な作品と出会い、大いに刺激を受け、勉強になりました。どこの地域でもアートを利用して、その地域の活性化をはかろうとしているように見えました。これらの経験をこれからの美術館運営に生かしていかなければならないと思っています。まだまだ旅は続きます。