スポーツする人 国吉晶子

 スポーツは好きですか?
 造形教室に通っている子は、どちらかというと机に座って静かにしている方が好き、という子がきっと多いと思います。一見「工作」と「スポーツ」は違うもののようですが、実は深〜い関わりがあります。
 4月は絵画の課題で版画を行いました。高学年は「人が動いている場面」を描くことを条件としました。
 サッカー、野球、卓球、テニス…とアイディアが浮かびますね。しかし、実際に経験したことがあるとないとでは、仕上がりにちょっとだけ違いが生まれてきます。
 走っている時、右手が前に出た時は、足はどちら側が後ろですか? サッカーでシュートを決めた瞬間、手はどんな動きをしていますか?
(また、版画は写し取る技法なので、左右が逆になることにも注意してください!)
 スケッチをしながら、実際に立ち上がって、そのポーズをとってみるように指導しました。鉛筆を、野球のバットだと想像して、握ってみてください。頭で考えなくても、きっと手が覚えているはず。
 普段から、ちょっとの距離でも歩いてみたり、走ってみたり、飛び上がってみたりしてください。体を動かすことで、経験の引き出しが増えます。
 そして絵を描く時、その中の登場人物の気持ちになってみてください。そうすることで、鉛筆の動きがいきいきし、見る人に感動を与えます。
 さあ、5月の絵画の課題は「自転車」です。今からお家の自転車を少しずつ観察しておいてくださいね〜

 


☆ジャンプをしているところ! その大胆な動きから、元気が伝わります。
☆体のわずかな傾きが◎! 画面からまさに歌が聞こえてきます。

美和 クランマー

 私はとても元気で相変らず、3〜5才児の障害児学級で働いています。一昨年は年末に主人の姪が車の事故で植物人間になってしまい、明くる年の1月に亡くなってから、義姉が家にしばらく住んでいたりと忙しくしていました。姪は夜中に友人宅から帰る途中、ハンドルを切りそこねて車がスリップして木にぶつかったのでした。この辺りは田舎で車道にはほとんど電灯もついていません。夜道では鹿やスカンクが山から飛び出てくることもあり、ほとんど車が走っていないとは言っても安心できません。車がないとどこにも行けないので高校生(16才)になると皆、教習所に通います。日本のように高額ではないし、教習所というのは実はなくて、個人でやっている教官が高校の前に車を停めて、生徒を乗せ(2〜3人)交替で運転させ、授業は高校の教室を使っています。実は実習を受けなくても自分で筆記の勉強をして、親に運転を教えてもらって免許を取得することもできるのですが、そうすると保険がすごく高くなるのだそうです。特に10代20代の男性は事故を起こす確率が一番高いそうです。うちのトミーも16才でドライバーズレッスンを受けました。免許を取る前に親の監視下で40時間、運転しなくてはならず、まだ取得していません。今はまだ雪や道路の氷った日も多く、運転させる気にもなれません。運動部では練習が隣町の屋内球場であったりして、放課後、上級生の車で行かなくてはならないこともあり心配です。
 ところで私の子供達も上の2人は高校生となりました。日本と違って髪型も服もある程度自由です。女の子は皆、お化粧をしています。一応、スカートは両手をまっすぐに降ろした時、指先より長くなくてはいけないとか、タンクトップはだめという校則はあります。トミーは昨年秋のサッカー部で部員全員モヒカン刈りにしなくてはならず、モヒカン刈りで学校へ行っていました。
 こちらの大学では入学の許可がSAT(共通試験)の結果だけではなく、高校での部活動や社会奉仕活動が大きく左右するので、皆いろいろとボランティア活動をしています。トミーの友人達もYMCAで放課後、保育園児を遊ばせるボランティアをしています。トミーは2月にスペシャルオリンピックのための募金を集める活動に参加し、冷たい海に入りました。彼は大学のことを考えてではなく楽しそうでやってみたかったそうですが、それをきっかけに5月に開催されるスペシャルオリンピックを手伝うことにしたようです。純は高校の女子生徒が髪を伸ばして、切った髪をかつらにするために売り、売上金を慈善団体に寄付するという行事を時々しているのに参加したいそうで、今、髪を伸ばしています。その他、サッカー部の奉仕活動で町の図書館の本の整理をしたり、道路でゴミを拾って歩いたりと、トミーも純もいろいろしています。一番下のジェイムスは今年、中学1年生です。中学校では特にそういう行事はありませんが、去年は小学校から老人ホームにピアノを弾きに行ったり、シェルターで料理を手伝ったりしていました。そういう事は、私は日本で学生時代に体験したことはないので、すごいなあと思います。数ヵ月前、他の州の小学校で20人の子供らが殺された後、その学校の先生が学校を楽しく飾りたいので切り紙の雪を作って送ってほしいと各学校関係者にメールを送ったそうで、私の働いているクラスでも雪を作りました。ジェイムスも中学校で作ったと言っているのを聞くと、トミーも純も高校で作ったと言っていました。きっと全国から山のような量の紙の雪が届いたことでしょう。亡くなった子供達が戻ってくる訳ではないのですが、全国の人が思ってくれているという気持ちはうれしい事だろうと思いました。

美和クランマーさんはアメリカに住んでもう20年近くになります。これまで広いアメリカであちこちに引っ越しをされてきて、現在はカナダに近い五大湖周辺の自然豊かな地域に落ち着いています。先日は久方ぶりに日本に帰郷され、香美市の美術館も訪ねてくれました。都築