旅立ちの日 井関さおり

 3月の2週目、上級生の工作は「旅立ちの日」でした。毎度のことながらネーミング先行で(笑)どんなものにするか悩んだ末、左右に揺れる人形のしかけで、卒業式で歌う様子を見本に作りました。
 この春で、造形教室でも小学校を卒業する子たちがいます。上級生になると、授業時間も増え人によっては塾にも通いだすため、なかなか教室へ来られないケースが増えます。そんな中でも6年生まで通ってもらえたことは、本当に嬉しく思います。
 私たちの世代と比べると、今の小学校の図工の時間数はずいぶん減っています。そして日常生活の中でも、ボタン一つで解決するような便利な物が増え、「自分の手で実体のある物に触れながら向き合う」ことが減ってきています。
 「学ぶ」ということは、ただ「情報」を頭に入れるだけのことではないといつも思っています。物事と向き合い、自分の力で自分の答えにたどり着く経験を積み重ねてこそ、身に付くものです。図工で絵を描いたり工作をしたりすることは一見、子どもの遊びでしかなく実益を伴わないものと捉えられがちですが、私はここに「学び」の要素が詰まっていると思います。それも、実際手を動かしながら「実体」を扱うものですから、今の時代の子どもにとって大きな役割を果たす力があります。
 教室の子どもたちが学年が上がるにつれ表現も発達していき、その歳にしかできない作品を見せてもらいながら、私は成長を感じる喜びをもらいました。絵や工作を通して身につけた「学ぶ」力を、子どもたちはこの先も発展させていってくれると思います。


☆一緒に卒業する友達が登場。仲の良さが伝わってきます。

☆不気味に揺れる宇宙人!動画でお見せできないのが残念です。

 

☆春風にそよぐ桜やチューリップ。生き物以外で見立てたところがナイスです。

☆ネコのお誕生会です。花束・ケーキ・飾り付けもこだわってます。

都築房子

 香美市立美術館では、4月6日より新しい展覧会が始まります。「吉村芳生展−色鉛筆で描く彼岸と日常−」は山口県の田舎、徳地(とくぢ)という所に住んでいる吉村さんが、その地元に咲いている花々を色鉛筆で克明に描いた大型の絵画を展示します。横幅が10メートルもある菜の花の群落は見事で、とても見ごたえがあります。また7メートルの藤の花はうっとりするような美しさです。他にもコスモスやケシの花が見事に咲き誇っています。これらの花々は写真かと思うほどリアルに描かれていて、見ているとこの世のものではないような不思議な感じがします。美しい花々の先には未知なる浄土「あの世」が見えてくるということに気付かされます。この作品を高知の方々にもぜひ見ていただきたいと思います。
 また、同時に作者が昨年1年間滞在していたフランスのパリで描いた500枚の自画像のシリーズも圧巻です。パリで毎日発行されている新聞の上に描かれた自画像は、まるで作者の存在証明のように日々うつろう自分の姿が写し出されています。
 このように今春の美術館はとても充実した内容で、皆様のご来館をお待ちしています。