カットマン 国吉晶子

 先月の2週目の工作は「カットマン」でした。
「カッターナイフの切り込みだけで動物を表現していく」という課題です。鉛筆で下書きをした上で、選び抜かれた線だけをカットし、下の台紙の色と対比させて描いていきます。
 下の2点はカッターでしかできない表現に見事に成功していると思います。
 1点目は、うずまき状にドラゴンを切ることで、体と体の間に空間が生まれます。細かい作業が得意のK君に、この課題はピッタリだった様子。ドラゴンは想像の生き物で誰も見たことはありません。つまり正解はないので、手足を何本生やそうが自由なのです。本人はとくに意識せずにこの構図を選んだようですが、ハサミでは切り取ることはできないこの部分は、超難関でした!
 2点目のクマを描いた作品の方は、魚を狙うクマの背中の曲線や最小限のカットで毛並みを表現した優秀作です。カッターで開けた穴の向こうから、台紙の色が浮かび上がっていたのでしょう。魚がただ泳いでいるだけでなく、水しぶきを上げて飛び上がる様子を描いています。挑戦する姿勢が◎です。
 2点とも、押し寄せるイメージを受け止めながらカットしていったことが作品から伝わりました

都築房子

 16日まで香美市立美術館で開催中の「絵金とその時代展」では、その関連でいろいろと江戸時代のことを本や資料で調べていきました。そうすると私自身とてもおもしろくなって、どんどん深みにはまりそうになりました。それは何より江戸時代がそんなに遠い昔のことではなく、現在の私たちの暮らしのほんのちょっと前のことであったという事実に気付いたからに外なりません。
 私の子ども時代(昭和30年代くらい)に、おじいさんやおばあさんから聞いた地名や高知の町のにぎわいの様子などが、ほとんど江戸時代のそれと一致することに驚きました。日本が高度成長をする前の暮らしは、江戸からずっと続いてきたものとそれほど変わっていなかったということです。私たちの暮らしが一変していったのは、昭和40年代以降だったことにあらためて気付かされました。
 現代の私たちの生活の基礎になっている町並や行政の仕組みなどは、ほとんど江戸時代に出来上がっていて、その延長線上に今があることを考えると、もっともっと江戸時代のことを知りたくなりました。「絵金」から始まって、こんなにも江戸時代を楽しめるとは思いもよりませんでしたが、これからも少しずついろんな機会に調べてより深く理解していきたいと考えています。