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井関さおり |
当然のことではありますが、子どもの絵はなぐり描きから始まります。まだまだ手も腕も器用に動くわけではないですので、「運動の跡」としての絵になります。視覚的な関心も薄いので、よそ見をしながら手を動かしていることもしょっちゅうです。
身体が発達して、手や腕を少しコントロールできるようになってくると、マルが描けるようになり、線もすっきりしてきます。この頃からだんだんと、描きながらおしゃべりをして、描いたものを意味づけるようになります。マルを描いた後に、「これなあに?」ときくと「おかあさーん」と言ったり。「運動」としてのなぐり描きから、「形」に「イメージ」をつなげ始める時期です。そして描いた後に意味づけをしていたのが、しだいに初めから何かの「つもり」で描くようになり、それから、描くものをあらかじめ「予言」して描くようになります。
大人の目から見れば、何かよく分からない絵でも、子どもにとってはこの「意味づけ」は大きな成長の証です。たくさんお話をしながら、「形」と「イメージ」をつなぐ「言葉」の見立ての能力が発達しています。「形」「イメージ」「言葉」がともに豊かに育つよう、小さな子どもがお絵描きをするときに、言葉のキャッチボールをしながら大人も一緒に楽しめるといいですね。 |