今の子どもたちにとって、テレビの無い暮らしなど思いもよらないことだろうと思います。しかし私たちは物心がついてから中学生の頃まで家にテレビが無い時代に育ちました。その代わりにラジオは生活の友でした。小さい頃の記憶に「尋ね人の時間」というラジオの番組がありました。それは毎夕5時頃から戦争で生き別れになった人々を捜す内容で「中国、東北部、○○から引き揚げてきた○○さんを○○さんが捜しておられます…」などというアナウンスが次々に流れていましたが、大人になった今でも強く心に残っています。またラジオドラマで子どもに「赤胴鈴之助」や「少年探偵団」などが人気で子どもでも耳で聞きながらしっかり頭の中にそのイメージを作ることができました。(当時、子どもの吉永小百合さんが赤胴鈴之助の中で声優をされています)
大人たちも夜になるとラジオから流れる野球中継や流行歌などに1日の疲れを癒されていました。年末のNHK紅白歌合戦もしばらくはラジオでした。大晦日に私たちのお正月の晴着の寸法を直しながら、母や祖母が夜遅くまでラジオを聞いていました。さらに、私たちが中学生になった頃ラジオで「9500万人のポピュラー・リクエスト」という音楽のリクエスト番組が大変人気があり、これでビートルズなどとも出会いました。洋楽を初めて知り、皆その魅力にはまりました。中学生くらいになると、家族一緒に見るテレビより自分1人で聞くラジオの方が自由で楽しい時間になっていました。このように私たちはラジオから入る様々な情報に影響を受けて成長してきました。
現在の子どもたちを取り巻く大量の情報は、テレビやパソコン、携帯電話、DVDなど多様な方法で入ってきます。しかし、本当に必要なものを選択することはますます難しくなってきているように思われます。
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