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井関さおり |
『魔法使いハウルと火の悪魔』
(著者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ / 訳者:西村 醇子 / 出版社:徳間書店)
映画『ハウルの動く城』はかなりの方が観たと思います。
その原作がこの本ですが、映画とのかなりの違いに驚きました。
原作では、ソフィーは3人姉妹でその妹たちもかなりお話に絡んできますし、荒れ地の魔女はあれほど姿が出てくる訳ではありません。映画で子どもとして描かれているマルクルは原作では15歳のマイケルだし、現代文明の世界が垣間見えたり、ラストシーンは完璧に別物です。ここまで違っていることは逆にとても面白いです。
これだけ違えた中で共通するポイントは、ソフィーが「あたしなんか」という思いにとらわれるほどおばあさんの姿を保ち続ける、ということです。
それを軸に、映画と原作、二つの世界を比べるととても楽しめました。映画のソフィーの方が可憐に描かれていて、「監督男性だしね」と納得したり。
『きのう何食べた?』(著者:よしなが ふみ / 出版社:講談社)
通信に漫画のおすすめを載せるのは初めてなので、少し悩みましたがこの本にしました。
弁護士の彼と美容師の彼、というゲイカップルが主役ということで、ちょっと変わった世界が展開されるかと思いきや、毎回描かれるのは当たり前の日常生活です。
一話ごとに必ず何かお料理が出て来るのですが、すべて家庭料理で、料理する姿も描かれるので読み手がレシピもだいたい分かるようになっています。
いつもこの人の漫画のご飯はおいしそうだわ〜と思いながら読んでいるのですが、それ以上に「食事をする」ことそのものの良さも感じます。
毎日の小さな事件の中で、おいしいものを誰かと分かち合ったり、料理することでちょっと気持ちが切り替わったり。食事って舌が喜ぶだけのものじゃないよなあと改めて思う一冊です。
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