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ラーラ |
映画『イノセント ボイス 〜12歳の戦場〜 』を見ました。
中米エルサルバドルで12年間続いた内戦の実態を、ひとりの少年の目を通して描いた実話の映画化です。この少年自身が13歳で亡命するまでの記憶を、青年に成長してから脚本にしました。
1980年代エルサルバドルは、グローバリゼーションの加速により仕事を失った多くの農民を中心に結成された反政府組織と政府軍との烈しい内戦下にありました。ごたぶんにもれず大国が後ろで操る政府軍は、現地人だけで戦わせるため、少年たちが12歳になると政府軍兵士として徴用していくのです。突然、学校にはいってくる迷彩服姿の政府軍兵士たち。次々と名前が呼ばれ、整列させられ、おそろしさに思わず尿を漏らしてしまう少年もいます。そんな少年も、アメリカ式軍隊教育を受けると、か細い体に大きな銃をかかえた生意気な兵士に変貌していきます。
町中には、いつも政府軍がたむろしています。夜になると、家々に銃声が響き渡ります。民家にまで銃弾があられのように撃ち込まれてきます。少年チャバは、母親と姉と小さい弟の4人暮らし。小さい弟はおそろしさで泣きわめきます。父親が仕事を求めて町を出ていったので、11歳の少年チャバは家長としてみんなを守ろうとします。ベッドのマトレスを弾よけにして、家族4人が体をよせあい銃撃が鎮まるのを待つのです。
あるとき、反政府組織ゲリラの1員である叔父が訪ねて来て、少年チャバをゲリラに誘います。叔父は、内戦のもたらした非人間的な悲惨さと憤りを唄います。この唄は日々の暮らしをめちゃめやにされた民衆の思いであり、少年チャバの心に響きます。
少年チャバは学校の行き帰りに、叔父からもらった小さなラジオで反政府組織の唄を聞きます。
少年チャバが町中の政府軍のそばでも平気で唄を聞いていることに気づいた神父は、とっさに教会の拡声器の大音響でこの唄を流して少年チャバをかばいますが、政府軍に袋だたきにされてしまいます・・・
この映画は、世界のここかしこで続く「内戦」の背景にある構造をあぶり出しています。この時代も続く大国主導の理不尽なしかけに、憤りがこみあげてきます。
だからこそ、政府軍の前で人間として大切なことを説く神父さんの勇気と、その言葉にたじろぐ兵士の表情に希望を感じました。また私は、おばあちゃんの所へ引っ越したチャバたちが、マンゴーの樹の上で戯れるシーンが大好きでした。でも、その樹も、戦火で黒こげになってしまったことが痛ましく・・・
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