いつも皆様にはお世話になっております。造形教室スタッフの森田優子です。このたび、今月(1月)をもちまして退職することになりました。縁あって京都に住むことになり、住み慣れた高知を離れること、そして親しい人たちとの別れを大変寂しく感じています。

造形教室では10年間お世話になりました。はじめのうちは、個性あふれる子供達一人一人とどう接していいものかわからず日々悩んだりもしました。都築先生をはじめ、先輩スタッフからアドバイスをうけながらどうにかこれまでやってこれました。毎月どんな工作をしよう、どんな面白いことをやってあげようかと、みんなで知恵を出し合いながら、でも基本は自分達が楽しいと思うものを作ろう、という大事なことを教わりました。
子供達はみんなとてもかわいいです。だんだん絵を描くことやハサミを使うことが上達したりと成長過程をすぐそばで見られるのはう
れしいものでした。

「出会い」は偶然ではなく、必然
だといいます。美術と出会い、造
形教室と出会い、いろいろな方々
との出会いに感謝いたします。
手が行き届かぬこともありました
ことをおわびするとともに、たく
さんの子供達と保護者の皆様、教
室の先生方、その他関係者のみな
さんありがとうございました。
また高知に帰ってきた際には教室
にも顔を出させていただきます。
その時には成長した子供達に会え
るのを楽しみにしています。
それでは皆様どうぞお元気で!

森田優子

1974年 高知市に生まれる
1994年 奈良芸術短期大学ビジュアルデザイン科卒
2001年 女流展/立体部門青潮賞 県展/立体部門特選・21世紀賞
2002年 8月 あおや和紙工房(鳥取県青谷町)に出品
2002年12月 ギャラリーファウストにて個展
2003年 9月 県立美術館5 ROOMSに参加
2003年10月 県展/立体部門褒状
2004年10月 県展/立体部門特選・100周年グランプリ

長い間、教室で働いてくれた森田優子は結婚のため、退職することになりました。1月以降については、2月に森田はまだときどき手伝いに来てくれるようです。
3月はスタッフの井関と都築でなんとか乗り切るつもりです。そして、4月より新スタッフとして國吉晶子が加わる予定です。いろいろ変動があってみなさまにご迷惑をおかけしますが、どうぞご了承くださいますようお願いいたします。都築
−私たちのなかの子どもへ− (13) 久保理子

「おやすみなさいおつきさま」(絵本)
(著者:マーガレット・ワイズ・ブラウン / 絵:クレメント・ハード / 訳:瀬田貞二 / 出版社:評論社)

 うさぎの子どもが、寝る前に、自分の小さな世界のすべてに、おやすみなさいを言う、ベッドタイム絵本の古典です。原書は1947年の出版です。月光にいろどられた世界は、60年近くになるとは思えない共感があり、「さみしさ」の絵の具が混じった絵の具を使っているかのよう。
 この絵本をめくると、「おやすみなさい」というキーワードから、かつての自分を思いださずにいられません。うさぎの子は、はっきりとした対象から、ほとんど感じるだけしかできないものまで、小さな世界すべての愛おしいものに、あいさつしています。ちょっとさみしそうな色のトーンも、私の回想をつっつくのでしょう。
 うちは、誰もが「あいさつ」をしないのが家風(笑)です。おはよう、おやすみ、いただきます、いってきます。そういうことを抜きにしていただけでしょうが、「おやすみなさい」に関しては、私から率先して言っていました。親が返事をするまで、しつこく呼びかけて。「眠り」という毎日の「死」にのぞんで心細くなる時間に、今うがった見方をすれば、「おやすみなさい」は、子どもから親たちへの遺言であったのかもしれません。

ラーラ

 日系フィリピン山岳民族の家族のすがたを描いた映画『アボン 小さな家』を観ました。これは、『泥の河』や『眠る男』で知られる小栗康平監督の助監督をした今泉光司さんが、現地NPOと共同で7年の歳月をかけて完成した初の映画。今泉さんは、アジアの人たちとどう関係をつくっていけばいいのか 探る旅の途上で、ルソン島北部の山岳民族のくらしと出会いました。村には現金が無いだけ。木さえ守れば豊かに生きていけます。
 映画では、畑の作物を、木々の果物を収穫するたびに「ご恩を返します」と自然の恵みに感謝するシーンが何度もでてきます。マンゴーやパイナップルの鮮やかさ、粗末だけれど清潔な小屋、青々と茂った緑と家畜の泣き声…なつかしい光景がそこにはありました。その一方で、山奥で自給自足の生活を営みキリスト教化されなかったゆえに「野蛮」と蔑まれ、圧倒的な勢いで迫ってくる消費文化に馴染まなかったゆえに「貧窮」に陥る人々の生活の危機が描かれています。こどもたちの教育費のために海外に出稼ぎに行こうとした母親は、旅券トラブルにまきこまれ、かえって大きな借金をかかえてしまいます。幼い姉妹が、―この子たちはほんとに現地の日系人ですが―手作りのほうきを、街のキリスト教会やモスクや中国の建物などで売り歩くシーンは、エキゾチックで愛らしくて印象的です。
 今泉さんは、丁寧な取材と、吟味して練り上げた脚本で、いろんな角度から問題提起しています。グローバル化した情報の押し寄せるいまこそ、ローカルな山岳民族の固有文化に自信をとりもどしてほしいと願い、4万人以上の現地の人々にこの映画を見てもらっているそうです。毎回、立ち見のでる盛況だとか。変化の時代を生きる山岳民族の家族のすがたを笑いを交えて描きながら、「地球と人間の真に豊かなありかたとは」と問いかけていました。