(5)
「親子ネズミの冒険」
(著者:ラッセル・ホーバン/訳:乾 侑美子/出版社:評論社)
絵本「おやすみなさいフランシス」でもおなじみのラッセル・ホーバンが描く、おもちゃたちの冒険物語。主人公であるネズミの親子は、息子とお父さんが向き合って手をつないだ人形です。ちょうど高い高いをするような姿勢で、誰かが背中のネジを巻いてくれれば動き出すことができます。ネジが巻かれなければ、何年もじっと動けません。
彼らが何のために冒険をするのかといえば、それは、家族と家を手に入れるため。悪者を退治するためでも、財宝のためでもありません。そしてそのために、ありとあらゆる苦難を重ねながら、仲間のおもちゃや、小さな生き物たちとともに外の世界をめぐるのです。ストーリーの裏には、人生の意味と運命の巧みな手が隠れていて、何重もの物語を読むかのようです。
自由に動ける人間にとっては、大冒険とはいえないかもしれません。けれど、人間ならば、これほどの思いをもって行動することもまた、なかなかできないことだと思います。いったい、ネズミのおもちゃが「自動巻き」になんて、なれるのでしょうか?どうやって家を手に入れようというのでしょうか?どうぞ彼らと一緒にぼろぼろの巡礼仲間となって、彼らの目線の先をたどってみてください。
久保理子
|