7. 小学校のまわり 都築房子

 私が通った昭和小学校のまわりは、今では全く別の町のようです。一年生の春に理科の授業で、学校の東側の田んぼに皆でメダカ取りに行きましたが、当時は、学校が東の町はずれにあって、そこから先は畑や田んぼが広がっていました。(現在の東雲町辺りです)
 現在と一番大きく違っていると思えることは、かるぽーとの辺りに高知市の台所ともいうべき青果市場と魚市場があったことです。そこは早朝から大変なにぎわいを見せて、堀川には多くの船が出入りしていました。社会科の授業で必ず市場へ見学に行きました。冷蔵庫の無い時代なので大きな製氷会社があり、ひっきりなしに氷が運ばれて行きました。菜園場や九反田は商店が軒を連ね、買い物客でにぎわっていました。また海運業が盛んで若松町辺りに何そうもの貨物船が停泊していていつも荷揚げ作業をしていました。よく先生に連れられて写生に行きました。学校の北の江ノ口川沿いには大きなガスタンクがあり、そこもよく描きに行きました。
 小学校は下町で、小さな商店や住宅、製造業などがごちゃごちゃとひしめいていました。まるで江戸時代のような長屋もあちこちにあり、友達の中に長屋暮らしの人がいて遊びに行ったことがあります。家の近くの多賀神社は遊び場でもあり、地域のシンボル的な場所でした。お正月や初参りなど、いろいろなシーンで人々が集まる大切な場所で、芝居小屋もありました。時々旅回りの一座が来てお芝居も見られました。普段はおじいさんたちが境内で投網をうつ稽古をしていました。
 通学路は狭い路地のような道が張り巡らされていて、行き帰りにわざと道を換えたりして、その迷路のような道を楽しんでいました。今のようにどんどん車が通る前ののどかな時代の話です。

(18) インクレディブル!インディア
 3. ジャイプル
チュンズ

 6月17日(水) 前日と同じ店で、ラジャスタンの民族の女性たちによる手刺繍のパッチワーク作品を買い付け。
 いったいこれはどのくらいの年月をかけて刺したんだというような驚くべき大作が壁の棚に多数積み上げられている。できるだけセンスと技術の高い、色合いの美しいものを数枚選ばせてもらう。職人さんが半日で仕上げてくれるというので、パンジャビドレスも布から選んで数着仕立てもらうことになった。インドの女性が着ているとてもオシャレな民族衣装だが、これもできるだけジャパニーズカラーをチョイスして…と。
 この日はちょうどこのお店の新しい倉庫の始動式があり、たまたま居合わせた私も参加することになった。
 ヒンドゥー教のお坊さんが商売繁盛をお祈りしていて、従業員の人たちが周りを囲んでいる。まず店主が先にお坊さんに従って儀式のようなことをし、次に彼の友達である私のガイドさんが前に進み、私も渡されたトレイを右へ3回まわしてお坊さんから額に赤い顔料で米粒を貼り付けてもらったのだった。
 帰りは立派な車で送っていただいたのはいいが、運転手さんがすごいスピードで他の車やリキシャを縫ってジャイプルの街を走り抜けようとする。そのすさまじいドライビング・テクニックにより、4月に観光したハワ・マハル(風の宮殿)が、まさに風のように車窓を通り過ぎて行ったのが見えた。
 ホテルに戻り、疲れていたので18:30まで眠り、起きてからバナナを3本食べ、夕飯は少し遅い時間からレセプションに電話でカレーとナンとコーンスープとチャイとマンゴーシェイクを注文。ご飯も美味しいし、だんだんとここが気に入ってきたな。
 もう旅も半分が過ぎたので、そろそろ飛行機のリコンファームと復路の列車の時刻確認を忘れないようにしないといけない。
  6月18日(木) 7:30起床。洗濯。湿気がないので毎日洗濯物がよく乾く。8:00にレセプションへチャイを注文。10:00に迎えに来てもらって昨日オーダーしていたパンジャビを受け取り、コットンの衣類とエコバッグも買い足すことにした。らくだの革製品もほしかったけれど、今回は断念。店主が発送まで手伝ってくれることになり、明日予定していた国際郵便局での作業が必要なくなってとても助かった。
  6月19日(金) さて、今日の夕方の列車でデリーまで戻るため、昼までにコトコト荷物を済ませないといけない。17:00にカルニニワスをチェックアウト。17:50ジャイプル駅発のデリー行きは今回ホームが手前側だったので、階段を駆け上がらずに済んだ。指定席なので、誰にも邪魔されることなく、車内食にはカレーをいただいた。
 夜デリーについて、ガイドさんたちに車で迎えに来てもらい、最初の日泊まったホテルへ。浅いバスタブにお湯を張って、久々に少し浸かってから就寝。 (続く)

都築房子

『ぼくだけの山の家』
(著者:ジーン・クレイグヘッド・ジョージ / 翻訳者:茅野 美ど里 / 出版社:偕成社)

50年も前にアメリカで発行された児童書の名作で、これが初邦訳になるそうです。子どもの頃に、誰でもが夢見る暮らし。それは一人っきりで山の中で自由に暮らすこと。それを実行してしまった少年のお話です。
主人公のサムは、ニューヨークの小さなアパートで11人家族でしたが、ひいおじいさんの住んだ深い森をめざして家を出ていきます。そして、大木のうろを家として、たった一人で自給自足の生活をしていくのです。図書館で調べた知識と、創意工夫で山の生活を生き抜いていくエネルギーに感心しました。人間が本来持っている生きていく知恵と勇気で困難を乗り越えていく少年に、心からのエールを送りたくなる一冊です。子どもが読んでも大人が読んでも、きっと楽しめると思います。