ヒマラヤの雪男

ビッグフットと同じくゴリラのような雪男。シェルパ語の「イエティ」が一番有名な呼び名です。パキスタンからブータンまでの国々にまたがるヒマラヤは、世界の屋根といわれる巨大山脈です。世界一のエベレストを初め、地球上で8000m級の山々はここだけです。そのため、一般の人よりも登山家・探検家の目撃報告が中心です。現地では古くから知られていたようですが、近代の西欧に伝えられたのは19世紀。20世紀には報告が増え、1920年には雪男として紹介されます。1951年に足跡の写真が報道された後は、雪男を捜しに探険隊も行くようになりました。日本からも1959年より何度か行っています。今年の9月には、登山家7人の捜索隊が最新のカメラを現地に設置しています。動物の体温を感知して自動撮影するもので、雪男を写すことが期待されます。一方、9月半ば、雪男の正体はヒグマとの報道がありました。日本山岳協会のベテラン登山家が長年くわしく調べたところ、地元でメティと呼ぶヒグマを日本では雪男としていたそうです。メティの毛皮、手足や頭部もヒグマだったそうです。雪男=熊説は昔からあり、世界的な登山家ラインホルト・メスナーも唱えています。後足で立って歩く毛が長い熊は、遠目には人間と間違えられる可能性があります。しかし2001年に、オックスフォード大学のブライアン・サイクス博士(『イヴの七人の娘たち』の著者)らが雪男のものとされる毛のDNAを分析しています。これはブータンの森で採取され、英国の調査隊が持ち帰りました。雪男は本来、食物が少ない雪山よりも低い森林に住むとされます。結果は博士の予想に反し、人でも熊でも他の動物でもなかったのです。博士らが正体不明のDNAに出会ったのはこれが初めてでした。雪男の謎がすべて解かれるのは、まだまだ先のことではないでしょうか。