The Story of rat's Land

　１９９９年、破滅に向って一直線につき進んでいく“ねずみ”たちに救済はあるか。
　包囲網は徐々に狭められていく。
　頭上を通り過ぎてゆく時間の流れを、押し止めることはできない。
　生命の誕生によって意志は受け継がれていく。

　沈黙は罪である。
　語るべき言葉を探せ。
　自分達の言葉を。

　１９９５年、“ねずみ”は出現した。
　まだ手足はなく移動できない。
　しかし彼らは増殖を続ける。

　１９９７年　第二世代の“ねずみ”が出現した。
　その時、彼らは手足を持った。
　そして第三世代の出現を見る。

　１９９７年「欲望」の具体化として“Mother”が誕生する。
　母体としての“Mother”は、次々と欲望を増大させていく。
　第三世代の“ねずみ”を連れて、肥大した欲望は内在化する。
　“欲望”に“抵抗”する者は出現したが、彼らに増殖する“ねずみ”たちを押し止める力はない。

　抵抗者のうちにも“ねずみ”たちに内通するものが出てくる。
　事態はより深刻になっていく。
　彼らは、“ねずみ”を袋に閉じ込めようと試みるが、失敗する。
　彼らは、次々と殉教者となってしまう。

　時の使者の告げる予言は偽物。
　“ねずみ” をさらなる混乱に陥れるためのもの。
　“救済者” たちには打つ手がない。
　無力な“救済者”たちは、愚かな“ねずみ”の群れの行方を手をこまねいて見ているばかりである。

　“Mother”は死んだ。
　今、はっきりとそのことを認識することができる。
　“Mother”の魂は、“救済者” の姿をして立ち現れてきた。
　彼らは天空で地上の“ねずみ” たちを見守っているが手出しはできない。
 

　物語は終息にむかっている。

　“Mother”によって生み出された“欲望”のメッセージは“ねずみ” たちによって拡散されていった。
　しかし、その“ねずみ” たちは中身のない皮だけの存在となり、やがて死を迎える。
　“欲望”の“種子”だけを残して。