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奥物部美術館・個展(クリックすると大きな画像がご覧頂けます)


〈ねずみ〉はどうして生まれてきたのか

TYPE1 1983年 淡路島

北淡の広大な造成地の中を強風にあおられて、転げ回っていた草の玉から〈ねずみ〉は生まれた。その土地から削り取られた土は神戸の埋め立て地に運ばれている。そして12年後、1995年その地で大地震はおこった。

TYPE2 1988年 大阪

5年後〈ねずみ〉はビルの地下に出現した。しかし、その姿は大きく変貌していた。鉛にシールドされた体を持ち、廃虚となった街を彷徨う。そして翌年ベルリンの壁は崩壊した。

TYPE3 1990年 群馬

山の中で、切れ切れの木片から〈ねずみ〉は生まれた。無害な彼らは数カ月後かすかな記憶を残して、ケルべロス(犬)とともにその地の土に還っていった。

TYPE4 1995年 災厄の年 高知、大阪

〈ねずみ〉は紫の衣をまとい、手足をもぎ取られた姿で現れた。そして再び都市のビルの地下に進出していった。

TYPE5→TYPE6 1997年 泉南、高知、丹南、高知

〈ねずみ〉は手足を持つに至った。欲望の名のもとに群れとなり泉南の地を走る。さらに〈Mother〉の出現で力を得ていく。この夏に密かに着実に〈ねずみ〉は世代交代を進めていった。そして猛暑の夏、この地に出現した〈ねずみ〉は、明らかに新世代の姿に変貌を遂げていた。そして秋、〈ねずみ発生装置〉の取り付けられた壁からは無限に〈ねずみ〉が発生し続け、加速度的に増殖していく。

TYPE6 1998年 岡山、丹南

〈ねずみ〉たちに抵抗をしようと試みるが、ことごとく失敗に終わる。そして秋には、〈ねずみ〉たちを袋の中に封印しようと試みるが失敗に終わる。

TYPE6→TYPE7 1999年 大阪、丹南、釜山、高知

地下で大発生した〈ねずみ〉たちは〈救済者たち〉のことばには耳をかさず、ひたすら破滅の道を突き進んでいった。ついに〈ねずみ〉たちは中身のない皮だけの存在となり、やがて〈救済者たち〉の見守る中、みかけだけの死を迎える。〈Mother〉の死とともに、〈ねずみ〉たちもまた死を迎える。しかし、その死はみかけだけの死であり、皮だけの死体となりながらも、〈ねずみ〉たちの意識は覚醒している。冬、ついに物語の最終章を迎える。山の中で大勢の〈ねずみ〉たちは、〈Mother〉と〈救済者たち〉に最後の別れを告げる。これより2000年に向けて、新たな旅立ちが始まる。

皮だけの〈ねずみ〉はクローニングによって増殖していく手だてを見つけた。



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