工作と絵画 井関さおり&国吉晶子

 1月の4週目は、キラキラバルーンという工作に取り組みました。これは私が以前参加したワークショップで教わったものを、子ども向けに簡単に作れるようにアレンジしたものです。
 銀のシートを貼り合わせて、空気の入るバルーン状のものを作ります。小さい子のバルーンは大きなかたまりひとつですが、上級生はパーツごとにバルーンを作って組み合わせて仕上げました。
 ちょっとの穴でも空気もれが起こるし、膨らませると形が変わってくるので、作り方はシンプルですが、なかなか難易度は高くなりました。
 多くの子はタコ型宇宙人のように作りましたが、魚や蝶や自分のキャラなどにトライした子もおり、大変でしたが手応えがあって面白かったです。
 できたら売っているバルーンのように、空気より軽い気体のヘリウムを入れて浮かせたかったのですが、吊り下げてフワフワさせるのも子どもたちには楽しめたようです。独特の感触なのでサンドバッグのようにパシパシ叩く子も。
 今までやったことのない素材と方法で工作ができたので、とても新鮮でした。
 1月の3週目の絵画の課題は「雪の日」でした。雪を実際に体験した子どもは少なかったものの、憧れからイメージを膨らませて取り組みました。中には気持ちがクリスマスにタイムスリップしてしまった子も…。
 よく見ると土の中で動物たちが冬眠をしています。寝ている様子がかわいらしく描けました。クマやリスが本当にお布団をかぶって寝ていたら…大事件です!

都築房子

 最近とても元気がでる本を読みました。この本は自分の属している社会の求める形からはみ出すことで、独自の輝きを放つことができるということを実証した「スプツニ子!」という芸名を持つ現代アーティストの話です。イギリス人と日本人の数学者の両親から生まれ、幼少時から周りになじめず、いじめられたりしながら自分は自分でいいのだという信念のもとで自分のやりたいことを次々に拡大していって、28才でアメリカの名門大学の助教授にまで至った過程が、面白く軽妙に書かれています。
 私は夢中になって、一時間足らずで読み終えました。ついにこんな人がアートの世界にも出てきたことに感動すら覚えました。この人のたどった道はアートに限らず、全ての子どもたちに通じる貴重な体験だと思いました。自分自身に負荷をかけつつ、成長していく姿は人間が本来もつ可能性を強く感じさせました。この本の表紙は見かけがアイドル本のように見えますが、中身は結構、手応えがあって、今なお私は元気が維持されています。ぜひ皆さんにも読んでほしい1冊です。

都築房子

 香美市立美術館では、この2月の下旬より「沢田明子展 命のはなびら」を開催いたします。高知県を代表する書家で、俳人でもある沢田さんは、2011年に90才で亡くなられています。同じ年の東日本大震災に際して、その想いを書にするなど、亡くなられる直前まで創作意欲を燃やし続けてこられました。書を志して70年以上、その作品は厳冬の中で凛として咲く梅の花のように気高く美しく、心を打つものがあります。縦のつながりが強い書の世界で、最初の手ほどき以外は師を持たずに独自の世界を貫いてきました。1957年に高知県展無鑑査となり、審査員を務められ、1996年に高知県展功労者表彰を受けられました。
 私は中学生の頃より沢田さんの書作品を県展などで見ていて、とても憧れていました。そして、香美市立美術館の館長となった今、こうして回顧展を開催できることになり不思議なご縁を感じています。実は20年ほど前に、一度だけ沢田さんと佐川から高知までタクシーでご一緒したことがあって、その時初めて親しくお話をする機会を得て感激したことを思い出します。沢田さんは一生懸命、ご自身の書にかける想いをお話されていました。私はそれ以来、亡くなられるまでずっとお会いできず残念に思っていました。私は立体作品を作っているので、書とは分野が違いますが、創作にかける想いは同じだと強く思っています。
 書は形のおもしろさだけでなく、その言葉の力もあります。沢田さん自身の詩や歌による表現の素晴らしさを多くの方々にぜひご覧いただきたいと思います。季節は春に向けて確実に進んで行きます。少しずつ暖かくなってきますので、ぜひ美術館にお出かけくださいますようお願いいたします。