仏像を描こう 井関さおり

 造形教室では、毎月第三週目はいつも絵画に取り組んでいます。「よく見て描く」ことや、「いつもと違った方法の描き方」を学んだり、「色の幅広い使い方」を意識したり、毎回いろいろと意図するものがあります。
 11月の上級生の課題は「仏像を描こう」。今までなかった珍しい課題です。都築先生から「今月は仏像を描きます!」と聞いたとき「へっ?!仏像ですか?!」と私は思わず聞き返してしまいました。
 雑誌などから仏像の資料を探すと、如来・菩薩・明王・天部・羅漢などなど、ひとくちに仏像といえども多彩な姿がありました。資料を見ながら子どもたちが気に入った像を一体選ぶのですが、鎧の姿がかっこいい天部の人気がやや高かったようです。穏やかなお顔の如来を選ぶ子も割と多くて、まだ少し小さい子ががんばって描いた仏様のお顔はとてもかわいらしくてなごみました。
 拝む対象として仏様を見ていましたが、こうして「描く」ことを通して見ていると装飾やポーズなどに改めて発見があります。特に装飾品には、今のアニメやマンガの中で使われている小物やスタイルも見えて、子どもたちにも受け止めやすかったのではないかと思います。
 資料を読みつつ多少仏像知識が自分にも入ってきましたが、「これなんて読むがー?(仏には難しい漢字が多いです)」「これなに持っちゅうがー?」「なんでこれだけ牛に座っちゅうがー?」などなどの子どもたちの疑問に答えるレベルには至りませんでした。すべての仏の姿にはちゃんと意味があるそうで、仏像の世界はまだまだ奥が深いです。
 私にとっても子どもたちにとっても「描く」ことはその世界(今回は仏像)への扉を開ける一歩だなあと思いました。

今年一年おもうこと
都築房子

 2011年は卯年ということで、この造形通信の1月号の絵にもあったように、かわいいウサギの年でおだやかな1年が始まりました。ところが、3月11日の東日本大震災を境に世界が一変してしまいました。
 教室の受験生で東京に行っていた生徒から聞いた話では、かなりの大きな揺れで驚き、そのうえ電車も止まってホテルに帰れなくなり、近くの小学校に避難して一夜を明かしたそうです。その後、東京では節電と放射能の不安が広がりをみせて、教室の卒業生で首都圏に住んでいる人の中には子どもと一緒に高知へ里帰りした人たちもありました。たまに出張などで東京に行った人の話では、節電で街中が暗くなって、みんなの気持ちも落ち込んでしまいそうだというようなことも聞きました。
 被災地から遠く離れた高知にいてさえ、目に見えない放射能の不安を感じないわけにはいきませんでした。不安と先が見えない中で、子育てをしていくことの大変さをつくづく思ってしまいました。これから長い年月をかけて復興していき、被災地の方々は少しずつ生活を取り戻しつつあると思いますが、子どもたちはその中で1日1日成長していきます。どうか健やかに生長してほしいと祈るばかりです。
 今でもあの大津波の映像や、福島第一原発の映像が流れるたびに、これが現実に起きた出来事としてはっきり認識して、先に進まねばならないと考えています。新しい年がよりよい年になりますように。

えとづくりの取材
都築房子

 ご存知のように教室では毎年、土佐和紙と紙粘土を使ってえとの置き物を製作・販売しています。今は来年の辰の親子を忙しく作っているところです。
 先月は、思いがけずNHK高知放送局からの取材を受けました。教室の奥の部屋に集まって、撮影用のライトに照らされながら、スタッフ一同緊張しつつ黙々とえと作りに励む姿が収録されました。
 その後すぐにテレビで何度も放映していただき、製作する様子と私のコメントが流されました。わりと多くの方が見てくださったようで、あちこちでお声をいただき、ありがたいことと思いました。インターネットのユーチューブでも見られますので、私の名前で検索してみてください。過去に放送された映像も出てきます。