火星の生命発見に向けて

昨年の1月に探査を始めたNASAの火星探査車は、初めの予想を超えて今なお2台とも活動しています。ESA(欧州宇宙機関)が軌道上に乗せた探査機も、火星を回って観測を続けています。数百万年前の火山や氷河の跡が観察され、赤道付近には氷の海のような地形がありました。火星の生命、少なくとも細菌などの微生物がいた可能性は高まっています。今年2月にオランダで開かれたESAの国際会議では、探査機の分光計で火星の大気成分を調べている科学者から、ホルムアルデヒドの発見について報告がありました。これは7.5時間で消えるという化学物質で、メタンから変化していると考えられます。その量から逆算して、火星のメタン発生量は1年間に250万トンとしました。大気中にメタンと水蒸気が多い地域は重なっています。この量は生物が出しているに違いないと語りましたが、装置の精度を疑ったり未知の地質活動の可能性をあげる科学者もいます。また、会議に参加した科学者250人による投票では、かつて火星に生物がいたと思う人が75%、また現在もいると思う人は25%でした。メタンの発生源が地球の強酸性の川にいる微生物のような生物と考える科学者はNASAにもいます。ただしNASA自体は公式には認めていません。1976年のバイキング計画では着陸船で土壌の分析実験が行われ、微生物らしい反応が出ました。しかし生物以外の化学反応の可能性もあるため、NASAはすぐに否定しました。関わったある科学者と実験データを見直した研究者は、生命反応だったと考えています。残念ながら、今の火星探査車は地質学的な調査が中心で、微生物を検出するための装置はありません。近い将来の探査では、火星の地表を掘って地下の微生物を探す計画もあります。生命の可能性に肯定的な科学者等も更なる調査が必要としています。